A Fistful of Films

一握りの映画のために...

シネフィルWOWOWのこと

映画チャンネル「イマジカBS・映画」がWOWOWの傘下になったことで「シネフィルWOWOW」へと生まれ変わる。それにしても「イマジカBS・映画」とはなんとダサいチャンネル名だろう。まあ、そこは百歩譲って良しとしよう。わたしが気になったのはむしろ「イマジカ」の部分だ。調べてみると、かつての「シネフィル・イマジカ」ではないか。いつの間にチャンネル名を変えたのか。何年か前から見なくなったうちに、この最良の映画チャンネルは色んな変遷を辿っていたようだ。

 その名に”シネフィル”とあるように、全盛期はまさしくシネフィル垂涎のプログラムが組まれていた。ハワード・ホークスドン・シーゲルミケランジェロ・アントニオーニエリック・ロメールアレクサンドル・ソクーロフetc。スター・チャンネルやNHKBSプレミアムに若干の退屈さを感じていた自分にとって、イマジカの放送作品の数々は(四方田犬彦的に言うなら)「映画史への招待」にほかならなかった。契約していなかった時期は、毎日のように番組表を眺めながらそれらの鑑賞を憧れたものだ。いちばん初めに見たのは、たしかアントニオーニの『欲望』だったはず。

さらには、同名のDVDレーベルも、ピエル・パオロ・パゾリーニアンドレイ・タルコフスキーフェデリコ・フェリーニらの作品を販売し、紀伊国屋に並ぶ質とラインナップを誇っていたように思う。デザインの点でもセンスがよかった。品数こそ少ないものの、こちらは2017年現在でも良い仕事をしていると思う。これははっきりと断言できる。いまだにルキノ・ヴィスコンティリリアーナ・カヴァーニらの作品を修復版や4K版でブルーレイ化しているのだから。もうすぐフェデリコ・フェリーニの『アマルコルド』も発売されるらしい。さらには、昨年の5月末あたりだったか、ジャン=ピエール・メルヴィルのフランス製暗黒映画『サムライ』を出したことも忘れてはなるまい。あの満を持しての発売は、エタンチェから出た『白夜』とともに、2016年のブルーレイ・シーンを賑わす「事件」だった。

それに対して、映画チャンネルのほうは明らかに凡庸になった感がある。言うなれば、シネフィル的な色気の消失である。かつて魅せられたようなプログラムはなくなり、きわめて一般向けのチャンネルと化してしまったのだ。そこで放映されるものの多くは、どこでも見られるような作品であり、わかりやすい現代のヒット映画であり、なんなら子どもでも楽しめるような作品ばかりだった。やや語調を強めて、なにがシネフィルだ、などと思ったことも一度や二度ではなかった。かつてイマジカが担おうとしてきたものは、ここ5年ほどでWOWOWの193chにその座を奪われたのではないか。じっさい、オットー・プレミンジャージョン・カサヴェテスジャック・ロジエクロード・ルルーシュ三隅研次石井輝男らの特集を企画してきた。セルジュ・ブールギニョンの作品を放送したのもWOWOWではなかったか。

「シネフィルWOWOW」となったことで、イマジカは改めてチャンネル名に”シネフィル”の一語を復活させている。これによって直ちにシネフィル的なチャンネルになるわけではない。とはいえ、会社のサイトを見ると、「シネフィル(映画を愛する人)向けの専門性の高い編成をより強化」と書かれている。それを意識しているだけでも救いというものだろう。シネフィル性がプログラムにしっかり反映されることを期待したい。チャンネル名の表層にとどまってはいけない。背伸びしても映画史の未知や不可解さに触れようとすること。古今東西の映画を手あたりしだいに見ること。映画を愛するとはそういうものだろう。映画教養主義もそれに連なるものだ。これらは急速に失われている。好きな映画だけ見ていればよい、などという現代的な映画鑑賞の身振りから遠く離れて。


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