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A Fistful of Films

一握りの映画のために...

第70回カンヌのポスターにC.カルディナーレ

今年のカンヌのポスターに若き日のクラウディア・カルディナーレ(C.C.)が起用された。元となった写真が撮られたのは1959年。『上と下』でM.ドモンジョと共演した年だ。翌年には『若者のすべて』に出演する。つまりこの写真はカルディナーレの輝かしいフィルモグラフィの始まりを告げている。それから5年も経たないうちに、ヴィスコンティ最大ののミューズとなり、L.コメンチーニ(『ブーベの恋人』!)やF.フェリーニの作品に出演し、M.ヴィッティ、S.ローレン、S.マンガーノらとももに60年代のイタリア映画史を担っていくことになる。そう思うと妙に感慨深い。

 「70」という記念すべき数字をバックに、鮮やかな赤のグラデーションのなかで回転するカルディナーレ。軽やかにステップを踏み、大きく口を開け、左右に髪をなびかせ、スカートはまるで花弁のようにふわりと舞う。この弾けるような快活さ! 躍動感! 思えば、これほど動きのあるカルディナーレもめずらしい。バルドーと激しいキャットファイトを演じてみせた『華麗なる対決』のような西部劇を除けば、ネオレリズモ的世界であれ、あるいは新興ブルジョワや貴族の世界であれ、このカルディナーレという女優の真骨頂は、身体の運動感というよりも、そのほどよい肉づきと包み込むような微笑みにあった。月並みな言葉で言い換えるなら、それは官能性と抱擁感にほかならない。なにをするというわけでもなく、ただ画面に立っているだけで、あるいはこちらにやさしく微笑みかけるだけで、映画を映画たらしめてしまう女優。それがカルディナーレなのだ。

ポスターを見たとき、こんな元気溌剌としたカルディナーレもたまにはいいなと思った。ところがこれが思わぬ批判を浴びている。どこに対してか。その細さに対してだ。どうやらウエストと太ももに修正が施され、実際よりも細く見えいるように加工されているらしい。実際の写真と今回の加工写真を比べると、その差は歴然としている。今朝のNHKのニュースでは「現代の価値観を押し付けている」という批判が紹介されていた。「現代の価値観」が「細い女性は美しい」という神話を指していることは言うまでもない。カルディナーレの魅力はその肉感にあるというのに。カンヌの広報担当はその点を見誤ったのではないか。いま一度、彼女の全盛期のフィルムを見返してほしい。ブリジット・バルドー(B.B.)やマリリン・モンロー(M.M.)にまでこういう加工が及ばないことを願う。

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肝心の画像は以下のサイトより。第70回カンヌのポスターに加え、1959年の写真も見ることができる。http://www.afpbb.com/articles/-/3123225