A Fistful of Films

映画のために...

新たな「トリプル・エクラン」

21世紀の「トリプル・エクラン」――そう言えばよいか。ユナイテッド・シネマが3画面映画上映「ScreenX」を導入する。中央と左右に設置されたマルチスクリーンによって、観客の視界270度に映像が広がる。ネットで調べると、韓国の同名サイトがヒットした。どうやらこれは日本ではなく韓国が開発した上映システムらしい。向こうではすでに2015年からシネコンで導入されており、さらには中国やアメリカにまで上陸している。2017年の現時点で「ScreenX」興行は世界の100以上のスクリーンに拡大しているという。

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サンドイッチはオシャレなのか?

ひきつづきサンドイッチのお話を。試しにサンドイッチのレシピをネットで調べてみた。思いのほか、かなり手の込んだものが多い。その分厚さといい、ハムと野菜の織りなす色彩といい、ウッド調の落ち着いた食器といい、それはわたしの思うサンドイッチとはおよそかけ離れたものだ。こう言ってよければ、あまりにも格好をつけすぎている。都会的で洗練されたグルメとしてのサンドイッチ。考えてみれば、ライフスタイル誌、カフェ誌、グルメ誌に掲載されているサンドイッチはそんなものばかりではないか。いくらサンドイッチ好きとはいえ、こうした格好良さやオシャレを気取ったものは好きになれない。

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サンドイッチの楽しみ

サンドイッチが無類に好きだ。あんなに手軽で美味しいものはない。一人暮らしの学生の分際からすれば、サンドイッチは「お手軽グルメ」の究極体のように思える。それは料理に嫌というほどつきまとう手間、面倒、時間のすべてを面白いように削ぎ落してくれる。おまけに一時のワクワク感まで提供してくれるのだから申し分ない。さて、何を挟もうか、スパイスは何にしようか、どんなパンを使おうかー。大学から自宅への帰路で、あるいは冷蔵庫の中身を眺めている最中に、そんな他愛もないことにあれこれと考えをめぐらせる。わたしはそれだけで楽しくなる。もちろん、作るプロセスも。

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渡瀬恒彦追悼:『狂った野獣』

渡瀬恒彦の追悼上映を先週から始めている。何本見るかはまだ決めていない。ポスト撮影所時代の俳優とはいえ、そのフィルモグラフィはあまりに膨大だ。それをデビュー時から現代まで網羅的に見ていくのはいくらなんでも厳しい。そんな時間はない。なので、とりあえず70年代の東映作品に的を絞ることにする。こちらとしては、野獣系の渡瀬を再確認することができれば、もうそれだけでお腹いっぱいになるだろうから。というわけで、第一弾に選んだのは1976年の『狂った野獣』。まさしくトートロジカルに「野獣」というキーワードがタイトルに組み込まれている。渡瀬の野獣ぶりの再確認にこれほど適切な作品もあるまい。

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渡瀬恒彦のこと

映画史を彩った俳優たちが次々に逝去していく。ミシェル・モルガンエマニュエル・リヴァ松方弘樹につづき、この春先には渡瀬恒彦が亡くなった。3月14日のことだ。偉大な俳優が亡くなると、いつも自宅で追悼上映をやることにしている。その足跡をいま一度辿るために。幸運なことに、ドラマのほうはいくつかテレビ局の追悼特番で見ることができた。これだけもこの俳優がどれだけ茶の間に愛されていたかがわかる。だが、わたしはドラマではなく映画のほうを再見したい。とくに東映時代のそれを。つまりは血気盛んな喧嘩屋としての渡瀬を。そこには茶の間のイメージとはおよそ異なる渡瀬が存在する。

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ボールペンは二度死ぬ

先週、Amazonでボールペンを二ついっぺんに注文した。メーカーはクロスとファーバーカステル。いずれも舶来品だ。とはいえ、とびきり高価というわけではない。前者は「イージー・ライター」、後者は「グリップ2011」というシリーズのもの。それぞれ2000円ほどで買えたから、外国製メーカーのものとしては比較的安い買い物ではないかと思う。が、どちらも買ってから二日と経たないうちに手放すことになってしまった。4月から早々とこんな憂鬱な日々を送ることになろうとは。

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第70回カンヌのポスターにC.カルディナーレ

今年のカンヌのポスターに若き日のクラウディア・カルディナーレ(C.C.)が起用された。元となった写真が撮られたのは1959年。『上と下』でM.ドモンジョと共演した年だ。翌年には『若者のすべて』に出演する。つまりこの写真はカルディナーレの輝かしいフィルモグラフィの始まりを告げている。それから5年も経たないうちに、ヴィスコンティ最大のミューズとなり、L.コメンチーニ(『ブーベの恋人』!)やF.フェリーニの作品に出演し、M.ヴィッティ、S.ローレン、S.マンガーノらとももに60年代のイタリア映画史を担っていくことになる。そう思うと妙に感慨深い。

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